ていたために、何十万の死んだ例がなかっただろうか。全世界の歴史が、このありがたからぬ、あるいはありがたいところの人間性の弱点によって、血で染め上げられ、肉で書かれたのではなかろうか。奴隷《どれい》の歴史を読んで、その主人の暴虐に憤る前に、人は、その奴隷の無知と、無活気なるを慨《なげ》かないだろうか。われら、賃銀労働者も、奴隷のように、農奴のように、われらの子孫をして拳《こぶし》を握らしめないであろうか。それは、人間の力をもっては、意思の力をもってしては、いかんともなし難いところのものであるか。
おれが、人類の歴史を見て泣くように、おれはまた泣かねばならぬ歴史を、書き足しつつあるんだ。おれは、そういう汚《よご》れた歴史に邪魔者としてはいることは、今までできたのだ。また今でもできるのだ。だが、それができないところに人類の歴史が汚されるような大きな結果が持ち上がるのだ。だが、血と肉とで積み上げられた歴史は、その生贄《いけにえ》がはなはだしかっただけ、それだけ美しい花が咲くんだ。歴史が行く道をおれはついて行き、その歴史の櫓《ろ》を押せばいいのだ。
「おい! 伝馬《てんま》はどんどん流れっち
前へ
次へ
全346ページ中96ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
葉山 嘉樹 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング