は思うんだ。船における戦闘は、陸上とは全然趣を異にすることが、このごろ僕にはわかって来始めた。僕らは、百人分の米を作って、自分は飢え、千人分の布を織って自分は凍えたり、大建築を建てて自分は行きだおれしたりするような労働者の地位を全く改めうるまでは、不断の闘争が必要なんだ。そしてその時は必ず来るんだ。当然来るべきよきものを迎えないという法はない。われわれはそれの来るまで迎えるんだ」
ストキはポケットから煙草《たばこ》をとり出して火をつけた。
「波田君、僕の話がいや味になりやしなかったかい。うんざりしちゃったろうね」
「いいや、おもしろかった。僕は、君らが経験した監獄の話を聞きたいんだ」
「監獄の![#「!」は筑摩版では「?」] 監獄の話は単調なものだ。単調無為という苦痛だけさ。社会では、僕らの生命はそれを顧みる暇のないほど多忙に搾取され、その溝《どぶ》だまりに投げ込まれるが、監獄では、ただじっとそれを見詰めるというだけのものだ」藤原は、静かにデッキへ出て行った。
「さあ、それじゃ、僕は昼食のしたくをしなきゃ」といって、波田は、コック部屋《へや》へと出て行った。
デッキでは、藤
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