そういうお気の毒な事情ならお払いするようにしましょうが、何しろ前例のないことですから、一度重役まで伺って見なければなりませんが、今すぐでなければいけないんですかね』と白水にいって、
『オイ、どうだい、すぐいるのかい』と、哀れな切り株にきいた。
『もちろんすぐです。今日《きょう》はもう三日後になってるんだから、おくれてるんですぜ』と、白水は、その切り株があわてて、ヘマな返事をすることだろうと思って、引き取って答えた。
『それじゃお話しして来ますからしばらく待っててくれたまえ』といい残して、バリカンでいたずらに毛をきられたむく犬のような格好で、後明人事係は出て行ったんだ。
長いこと待たせて後明は帰って来て、紙っ切れを渡して、
『それへ金額を書いてください、そして、その金額は向こう三か月間に分割して、収入から差し引いて積み立てますから、そのつもりでいてください』と抜かしやがったんだ。
『何をこのむく犬め』と、白水はいきなり怒鳴りつけて、そこにあった椅子《いす》を振り上げかけたが、切り株が止めた。
『へえ、ありがとうごぜえます。今さえ助かりゃ、あとは三月で間違いなくお返しいたしま
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