、とか、畳と畳の間から、まず汚《よご》れた水が、ブクブクと吹き出して来るものだとか、押入れへ、幸い、三人を入れましたので、とか、彼が、今そこで、そんな目に会ってでもいるように、細大もらさず、『客観的』に話し始めた。
彼の話は、決して腹の立つべき質《たち》のものではなかった。けれども、その長さと、それから、繰り返しと、切りのないのとには、だれもが退屈をしなければならなかったし、それに、話の中に、いつのまにか、問題と、話の中心とが離れてしまうという困難な欠点があった。
『それで、どうだというのだね』と後明は、この男にきいた。
『へー、それで』と、この哀れな男はおうむ返しに答えた。そしてそれっ切りで先が出なくなってしまったのだ。彼はもう、自分の要件は今までの話の中で話した、それも繰り返し繰り返し話したような気がしていたのであった。もうこれ以上何を申し上げましょうといった顔つきをしていた。
一三
『そういう悲惨な事情であるから、自分の労働賃銀の一部を積み立ててある、積立金を払い戻してくださいというのです』白水が代わって話した。
『君は頼まれて来たのかね』後明は、それの方
前へ
次へ
全346ページ中74ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
葉山 嘉樹 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング