ところの職分及び生活範囲を、自分から容認してしまうのであった。
彼らは、陸でも、これより月給がいいのに、おれは海の上でなぜこんなに少ないのだろう。おれも陸に上がって働けないだろうか、とても働けまい。口があるまい。と、彼らは法則どおりに思い込んでいるのであった。
ボースンが「とも」から帰って来た。そして「特に今日は休暇を与える」といったことを伝えた。
この報告は、何らの批評もなく皆に受け入れられ、喜ばれた。
「ばかにしてやがらあ『特に』だとよ」と、うれしそうに叫びながら、だれもが、何をするためにともわからずに、そのベッドへと駆け込んで行った。
そしてこの貴重なる、出し渋られた休日を彼らは大抵眠ってしまうのであった。全く、いつもの例のごとく、この時も、一人残らず、その巣へもぐるが早いか、眠ってしまったのであった。
唯一の切実なる欲求を睡眠に置いているセーラーたちは、そのことから見ただけでも、どのくらい彼らが過労し、酷使されているかがわかる。
一〇
朝食は八時である。波田は、ボーイ長が負傷したため、仕事の間に炊事の方をやらねばならなかった。二時間ばかり間があるので
前へ
次へ
全346ページ中52ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
葉山 嘉樹 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング