、彼はその時間を、自分のベッドへともぐり込んだ。彼は、八時になると、コックから起こされた。彼は、おもての人たちが食べるように、大きなみそ汁|鍋《なべ》と、お鉢《はち》とを、コック場《ば》から抱いて来て、柱に添うてつり下げた、テーブルの上へそれを載せた。それから彼はあらゆる準備を終えて「飯だ!」と怒鳴った。
 ボーイ長には、昨夜どおりに、みそ汁を添えて与えて、彼は第一番に朝食についた。それは、全くうまい飯であった。みそ汁もうまかった。沢庵《たくあん》も、……
 波田が食っているうちに皆も眠い目をこすりこすり起きて、飯にとりかかった。
 船の飯はうまかった。それは、全く沢山食われた。それは味としては実にまずさこの上もないものであった。みそ汁にしろ、沢庵にしろ、味という点から味わう時にそれは零《ぜろ》であった。けれども、これがセーラーたちにはこの上もなくうまかった。彼らはよくそれほど多量に食べると思うほどむさぼり食った。
 ストキは波田に、セーラーたちが、まずいものを多く食べることには、心理的な部分も非常に手伝っているといったことがあった。ストキに従えばこうであった。
 セーラーは食物を定期
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