うけをしよう」とした最初の考えは、そのまま彼らを怒濤《どとう》の上で老年にしてしまい、磨滅《まめつ》した心棒にしてしまうのであった。
その夕、ボーイ長のベッドのそばに集まった藤原、波田、小倉の三人は、皆ひどくしんみりしていた。
七
「おれたちは何だってこんなに泥棒|猫《ねこ》扱いに、いじめられるんだろうなあ」と、藤原がため息と一緒に吐き出すようにいった。一時の興奮から、夕方ボーイ長のことで来たチーフメートとの事を思い出して、きっとよからぬ予感に襲われたのだろう。
「それゃ君、泥棒猫だからさ」と小倉がひょうきんに答えた。彼は人に落胆させまいとして、いつでも骨を折る気のいい正直者であった。
「どうしてなんだろう」藤原はおとなしくきいた。
「十匹[#「十匹」は底本では「十四」と誤記]の猫の中の二匹が泥棒猫であっても、その全体が泥棒猫と思われるんだからな。まして君、十匹[#「十匹」は底本では「十四」と誤記]のうち八匹がそうだったら、もちろん泥棒猫団だろうよ」
小倉は答えた。
「それじゃ、僕らは一体、生まれつき泥棒猫だったろうかね」
「多くはそうだね。つまり僕らが泥
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