らないから、お前たちは、ここでちょっと待っててもらいたいね。ちょっと相談をして来るから」と藤原へ言って、「どうぞ私の室まで」とメーツらに目くばせをして、彼は船長室へ又候《またぞろ》はいって行った。メーツらは続いた。
「波田ってやつあ、どえらいやつじゃねえか」とサロンの外では、波田の行動に対して、賞賛の辞を惜しまなかった。「あれに限るよ。あれで行きゃ、こちとらだって、いつでもこんなに苦労しなくても済むんだが」
「そうさ、力の強いのが勝つんだ。おれたちゃのまれてるんだ」などと火夫たちは、その場から去ろうとはしなかった。
水夫たちは、相手がいなくなったので、極度の緊張から解放されて、煙草《たばこ》に火をつけて、休憩した。
「どうだい、ボースン、お前の代わりまでいいつけられたじゃないか」波田は、ボースンの方を向いて言った。ボースンは、まるで、ひどく頭でも打たれた者のように、ボンやりしていた。出し抜けに船長を斬《き》ったりするやつは、彼も見たことがあったが、口も手も、これほど達者なやつは見たことがなかった。「それにやつはまだ子供じゃないか」ボースンは、びっくりしてしまっていた。「いや、ど
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