持ってることは、もう言わなくてもわかってるだろう。サア! くだらない筋だの、金ピカだのを除《と》って、人間として、人間の要求に応ずるがいい」
波田はその椅子の上へ、ドカッと腰をおろした。そしてシーナイフを藤原の前から取って彼の尻《しり》っぺたにブラ下がっている、その帆布製の鞘《さや》に収めた。
人々は初めてホッとした。彼がライオンのように、あばれ回らなくて幕になったことが、だれもを安心させた。実際、それはまあよかったとだれもを感じさせた。
船長は、まるで、ばかにしたような態度を、要求書へ向けていたのだが、今では、それが非常に尊いものででもあるように、チーフメーツの前から、自分の前へ引き寄せて、ながめ初めたのであった。この紙っきれに、あの情熱と憤懣《ふんまん》とが織り込まれてあったのだ! 彼は、それを引き裂かなかったことを今になって喜んだ。
それを引き裂きでもしていようものなら!
「それで、その要求書にある条項を、一々説明しましょうか、もし、お求めになるならば」藤原は言った。
「いいや、説明には及ばないだろう。大抵わかってるだろうから。しかし、一応メーツたちと相談しなければな
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