ら聞いてやるとそう言いたまえ」船長はまるでチーフメーツが指尺《さしがね》ででもあるように頭から足までを計った。
「私もやって見たんです。ところが、それが容《い》れられるまでは絶対に働かないというのです。来年の春になっても働きゃしないとこうなんです。そしてそれは船長が決定権を持ってるんだから、あなたは船長へ渡してさえくれればいいんだ――と言うんです。私はどうせあとでわかることだからと思って取っといたのです」チーフメーツも、船長からガミガミやられると「何だこの野郎、おれだってあと一年で船長の免状がとれるんだぞっ」と思わざるを得ないのであった。「団扇《うちわ》見たいなボート見たいなチョコマン舟の船長で威張ってやがら。へん、ボースンといった方がよく似合うよ」と憤慨するのであった。が、それは思うだけのもので、何ともしかたがなかった。
「どんな寝言が書いてあるんだか見せたまえ」船長は要求書を取った。
「そら、やつは受け取ったぞ!」藤原が低い力のある声で言った。
「フン、フン」船長は軽蔑《けいべつ》しきった心持ちを鼻から吹き出した。が、第六の条項、深夜サンパンを船長の「私用」では漕《こ》がな
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