ーツが上がって来たのでチョッとニッコリした。
「どうも、サア、スタートしよう」船長はいった。そうして息を切らしながら彼の前に突っ立っている、チーフがただじゃないのを見てとった。そしてその紙っきれへ目をつけた。
「水夫めらが要求書を出しているのです。舵夫《だふ》まで二人はいっているのです」チーフメーツはようやくこれだけをいうことができた。彼は要求書を船長の前へ差し出した。
水夫の出入り口では、三尺幅の出入り口へ、一尺幅のベンチを抱《かか》え出して、藤原が出入り口へ最も近く、波田、小倉、西沢、と腰をおろして、顕微鏡的なピケッティングラインを張っていた。藤原は船長とチーフメーツとが要求書のことを話しているのを、おもての出入り口からながめていた。
船長はチーフメーツの要求書を見ようともしなかった。そんなものはチーフメーツが、引き破いてしまえばそれで円満解決が、船長に言わせるとつくのであった。それだのに、チーフは、そんなくだらないことまでもおれに持ち込んで来るのであった。
「そんなものは、引き裂いちまいたまえ! そんなもの、大体君がビクビクしてるからいけないんだ! 万事は横浜へ帰ってか
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