ける予定であった。従って、その予定は、一時間も延長しうるものでなかった。
明朝一番で船長は登別《のぼりべつ》の温泉から、その愛人と別れて、一番の列車で室蘭へ帰って来るはずであった。
船長が、船へ上がり切ると同時に、ブリッジには、彼の姿が現われるだろう。そこで、彼は「ヒーボイ」と、錨《いかり》を巻くことを号令するであろう。
それまでは、今までとすこしも変わらないだろう。だが、それからが変わるだろう。彼らは「横浜正月」が、すでに実現されうるものと信じていた。その安心を、はなはだしく揺り動かされ、のみならず、その他のことも一切が、まるで、プログラムと違った方向に脱線して、坐礁《ざしょう》したということを、さとらねばならないだろう。
そして、それらの原因は、水夫らが、要求条件を提出して、目下交渉中であるから、彼らは、働いていないのだ。それで、船が動かないのだ! ということが、船内一般に知られるだろう。われわれの要求条件は、エンジンの労働者によっても、吟味せられるだろう。この要求条項は、彼らにも、何らかの衝動を与えるだろう。そして、そのために、この要求条件は、よく考えて、作られなければな
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