らない!
 藤原は、煙草の煙の間から、こんなことを考えていた。
 彼は、その紙っきれをながめた。それには、要求条件の原案らしい文句が、書かれてあった。労働時間の制定、労銀増額、公休日、出帆、入港は翌日休業、公傷、公病手当の規定及び励行、深夜サンパン不可、などが乱雑に書かれてあった。
 彼は今、それらの条項に、要求書としての形を与えるために、苦しんでいるのであった。「チェッ!」藤原は舌打ちをした。そして、煙草の灰を本の表紙の上に、やけに払い落とした。「こんなことを今さら、要求しなければならないなんて」
 彼は、その紙きれをポケットに入れて、寝箱からおりた。そして、波田へたずねた、「小倉君の方は、どうなったんだろう」
 「さあ、それを、まだ何とも聞かないんだがね」波田も、心配しているのであった。
 「小倉は、当番《ウアッチ》かい、今?」
 「どうだか」波田は、出入り口まで行ってブリッジを見た。
 小倉は、ブリッジを、アチコチ歩きまわっていた。
 「いるよ、海図室《チャートルーム》で、相談しようじゃないか」波田は、ストキに耳打ちをした。ストキはうなずいた。
 「じゃ僕が、都合はどうだか、きい
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