長でなきゃ考え出せねえ名案だぜ」西沢がガタガタ震えながらそれでも、早く降りたいばかりに、盲目《めくら》が杖《つえ》を振り回しでもするようにむやみに塗り立てた。
「やつあ、おいらが、マストにくっついて凍ったのが見たいんじゃなかろうかい? え、おれは、あいつの魂胆はてっきりそこだと思うよ」波田も震えていた。
「きまってらあね、金魚が凍りついたのよりゃ、よっぽど、人間がマストへ凍りついた方が珍しいからね」西沢が答えた。
大きなマストも、その高い部分では、随分揺れた。それは、その磨《みが》き澄ました日本刀のような寒風が揺するのだった。
「はたちやそこらでペンカンさげて、マストにのぼるも――親のばちかね」西沢は坑夫の唄《うた》をもじって、怒鳴った。
――シューシュ、どころか今日《きょう》このごろは、五銭のバットもすいかねるシュッシュー――と波田もうたった。
「何だ捨てられた小犬みてえな音を出してやがる」西沢が冷やかした。
「おめえのはペン罐をたたいてるようだよ」波田がやりかえした。そして彼は下を見た。
「オイ、まだ大分あるぜ、何とかうまい便法はねえかなあ」波田はこぼした。
「あ
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