原は簡単に暴化《しけ》の話と、横浜の話をした。
 医者は、大きく、うなずきながら聞いていたが、
 「足は、これで一週間もすれば、糸を除《と》れるようになると思うんだが、胸の打撲傷のところは、一度、内科に、見てもらわないといけないね。どうも、そこは外科では、ちょっと困るからね」
といった。
 「それじゃ、胸を内科で診察してもらうんですか」波田がきいた。
 「そう、その方がいいね。足は絶対に動かしちゃいけないよ。五日か一週間のうちに、もう一度来てください」
 「は」と藤原は答えて、二人はボーイ長を抱《かか》えて、内科の方へ行った。
 一週間、以内なんぞに来られやしない――ことは皆を困らし、途方に暮れさせた。が、まあ、内科の方が、済んでから考えることにしようと、言い合わせたように、皆が考えた。それは、痛い傷に触れたくないような状態であった。
 内科の医者は「熱が夕方になると出るだろう」とたずねた。ところが船には、ともは知らずおもてには、検温器などは見たこともなかった。従って、熱もあるにはたしかにあるんだが、高すぎるのか、低すぎるのか、皆目見当がつかなかった。
 「計ったことがないんですが、実
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