ったのだのが、二、三人かけて待っていた。
 そのうちに「安井さん」と呼ばれて、ボーイ長は二人《ふたり》に抱《かか》えられて、診察室へはいって行った。
 「どうしたんです」医者はきいた。
 ボーイ長は、かいつまんでけがをした時のようすと、痛いところとを話した。蒸気のラジエーターが、白い湯げを吐いていた。
 ボーイ長は、寝台の上で巨細に診察を受けた。そして、足は、改めてナイフで切り開かれたり、ピンセットで、神経を引っぱられたり、血管を引っぱり出して、それを糸で縛ったりした。
 「どうして、こんなに、いつまでもほっといたんです。夏だったら、もうこの辺から切り取らねばならぬようなことになってたかしれないよ」といって、膝《ひざ》の辺を指さした。
 「船長が、どうしても診《み》せることを許さないんです。それで、僕らは、自費で連れて来たんです」藤原は答えた。
 「何か、船長と、例のごとくけんかでもしてるんだろう。船では、よくあるこったからね。君たちも強く出たんだろう」若い医者は、近視眼鏡の奥で、その人のよさそうな目で、笑いながら言った。
 「そんなことじゃないんです。全く、話にならないんです」と、藤
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