とに、彼らは、少しずつぬれるのであった。
やがて、一行は、レールの平原を通り越して、街に出た。そこで、ボーイ長に俥《くるま》か橇《そり》かを雇いたかったが、そんなものはなかった。波田と藤原とは、かわるがわる汗だくになりながら坂を上《のぼ》り上って、もう少し上れば、半島の頸部《けいぶ》から、大洋の見えるほど、市街の高い部分へ上って行った。そこに公立病院があった。
三七
受付で、診察券を買って、外科の待合室で順番を待った。まるで、言葉の通わない国へ上陸したように、不案内であった。船の生活が、彼らを、だんだん陸上においては、不具者同様にするのだ。
白い服を着て、看護婦たちはいた。そして、美しいのもいた。けれども、波田の考えたような夢のような、女はとうとう見つからなかった。けれども、彼らは、ペンキのにおいの代わりに薬のにおいをかいだ。殺風景の代わりに、清い女の声が流れ、看護服の裳《もすそ》がサラサラと鳴った。薬のにおいの中に、看護婦の顔からは、化粧水の芳香が、蜘蛛《くも》の糸のようにあとを引いて流れた。
椅子《いす》には頭じゅう繃帯《ほうたい》したのや、手を肩から吊《つ》
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