の鼓動がくたびれていて、額から冷汗が出て、ものを言う気に、どうしてもなれなかった。ただ、アーッと小さくため息をもらした。
 番小屋で休んでいた男女の人足たちは、彼らが取りめぐっていた、ストーブの一辺をあけて三人に与えた。そして、ボーイ長の負傷に同情と憐愍《れんびん》の言葉を贈った。
 「おれたちあからだが資本《もとで》だでなあ、大切にしなけれや」と言い合った。「かわいそうにまあ、まだ子供だによ」と言った。
 ボーイ長の左足は、銃剣の尖《さき》のように、白木綿《しろもめん》でまん丸くふくれ上がっていた。その尖《さき》がストーブの暖かみで、溶けた雪粉によって湿らされていた。
 ボーイ長は、そこで、変わった人々の慰めの言葉を聞いて、涙ぐまれてしようがなかった。
 彼の母ぐらいの年配の老いたる婦人も、あの劇労に従うのであろう、ショベルを杖《つえ》にストーブのそばへ立っていた。彼は、恥ずかしい気持ちを感じた。なぜそうであったかはわからないが、彼がけがをして病院へ負われてなど行くということが、恥ずかしい気がしたのであっただろう。そこにいた人たちは、そんな大きなショベルを動かすさえ困難であったように
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