、ボーイ長を背中に負《おぶ》った。水夫たちは、ボーイ長を彼の背中に、そうっと乗せるようにした。
「済みません」と、ボーイ長はうれし涙に詰まったような鼻声で言った。
三人は、四本の足で出発した。
子供を負んぶすることでさえも、非常に肩が痛く、また重いものである。ボーイ長の場合にははなはだしく重かった。そして、困ったことには、その胸が痛く、なおより悪いことは、砕けた左の足が、ともすればダラリと下がって、雪の中をひきずるのであった。ボーイ長は、足を引き上げていようとして、全身の注意を左足に集めて、それを、ひきずらすまいとしたが、だめであった。ボーイ長の足の下がると同様に、波田の手までが下がるのだった。
波田が、ボーイ長を揺すり上げるのは、二十歩から十歩になり、今では一歩ごとに揺すり上げるようになった。ボーイ長は、痛さと寒さとのために、顔色をなくしていたが、それでも辛抱した。
彼らは、桟橋から、二十間ぐらいのところにある、[#「、」は底本では「。」と誤記]番小屋へはいった。そして、ボーイ長をベンチへおろした波田は、額の汗をぬぐった。
「アア、ご苦労様」藤原は言った。ボーイ長は、心臓
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