いるし、ボースンにしても、三上にしても、死に得た。彼らは足が立たなかったといっていた。そのはずであった。どんな大男でも、海の幅ほど丈《たけ》のあるものはないからだ。つまり彼らは、横になりながら足を突っぱろうと試みたのだ。
 二人は、櫓と、舟板と洋傘とをしっかり握りしめて、人足に助け上げられた。
 ボースンの荷物は、布団《ふとん》一枚と毛布一枚との包みが取りとめられた。そして、帆木綿《ほもめん》の袋の方は流れた。そして、一切は残るくまなく完全にぬれてしまった。それは、吸い取り紙が完全にぬれたように、ほとんど一切を役に立たなくしてしまった。
 それは、ブリッジから、望遠鏡で見る時に、流れて行く行李《こうり》まで見えたくらいであった。
 「これは痛快だ、こいつあおもしろい、ワッハッハハハハハハ、ワッハッハッハハハハハ、とてもたまらない[#「たまらない」は底本では「たまらい」と誤記]、ワッハッハハハハハ、あれを見たまえ! 舟板を虎《とら》の子みたいに抱いてるぞ、ワッハッハハハハハ」船長はころげ歩くばかりに笑い狂った。全く、それは、関係のない者から見ると、おかしい情景でもあったろうさ。チーフメー
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