んどん進んで行った。そして、陸岸近くなって、もう一、二間と、いうくらいのところまで進んだ時に、後ろから追っかけられた、例の巻き浪《なみ》に、くるまれて、旋風が埃《ちり》でも渦巻くように、ゴロゴロッと横にころがしてしまった。もちろん、船長とチーフメーツはこの上もなくおもしろがり、手を打って喜んだ。
 岸には、石炭の人足たちが、もう少し凪《な》いだらば、本船へ仕事に出かけようとして沢山集まって、そのありさまを見ていた。
 人足の四、五[#「四、五」は筑摩版では「四五」]の者は直ちにおどり入った。そして、二人《ふたり》は――三上は櫓《ろ》と抱き合って、ゴロゴロころがった、彼は、立とうとして二、三度試みたが、彼の四倍も長い重い櫓を抱《かか》えていたので立てないで、その代わりに潮を飲んだ。ボースンは、そのとっさの場合にも、荷物を流すまいとして、手を章魚《たこ》のように八方に広げて、手にさわるものをつかもうとしながら、グルグルと巻きころがされた。そして、彼は手に舟板《ふないた》一枚と洋傘《こうもり》一本とをしっかりと握りしめていた。
 もし、人足が助けてくれなかったならば、伝馬はもちろん、流されて
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