うな元気元気した気になった。
 三上は、何とも思わなかった。それは、人のことなのだ! ナンバン、ナンブトーも、同様であった。
 読者は、作者に対してこのことで憤《おこ》っては困る。作者が冷淡にしたわけではないのだ! もしまた、皆がそうでなかったら、ボースンがおろされるようなことも初めっから生じ得なかったろう。要するに、労働者が結合していないことを、作者に向かって憤られるのははなはだ迷惑だ。
 ボースンはばかな子が、その帯をくわえるように、その靴をいつまでもいじくっていた。
 しばらくして、彼は、その靴を床へ力一杯たたきつけた。そして、しばらくまた考えていたが、また、それを拾い上げて、その破け目を子細に調べて、ソーッと、下へ置いた。彼は、寝床の縁板《へりいた》のすみに、セルロイドの妻楊枝《つまようじ》を作って置いてあった。それは歯のためにいいだろうと、彼は自分で思い込んでいた。彼はまた、それへ目をつけた。これはどうしよう。彼は、それをとり上げて、また、子細に検査を始めるのであった。一切のものが急に、非常に重大な、貴重なものであるように、彼は感じ初めた。
 水夫たちは、ボースンの室をのぞい
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