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ボースンはおもてへかえった。そして、どっかと自分の寝箱の中へ、からだを投げつけた。一切は決定した。ボースンは業務怠慢で下船命令を食ったから、一年間乗船を海事局の名によって停止されるのだ。それだけの事実なのだ!
悲惨なる事実は、新聞の三面に「死んだ人」の欄に一括して載せられる。ブルジョアの結婚が破れたことは、全紙を数日間にわたって埋《うず》める。それだけのことなのだ!
(以下十九字不明)凍死し、飢え死にし、病死し、自殺し、殺戮《さつりく》されることは、その状態なのだ! (以下七字不明)! もし、新聞や、その他の社会が事実を顛倒《てんとう》してると考えるならば、それは、君が資本主義の社会を見ていないからだ。
もし、それらの悲惨なる事実がなかったならば、それらの悲惨事の上にのみ建つ、ブルジョアの社会建築はどうなるのだ。それは、だから、実は悲惨事ではないのだ。貧窮のために死滅して行くことは、すこしも悲惨ではないのだ。死滅して行くほどに多数が貧窮であるからこそ、これほど、ブルジョアが富んでいるんだ!
だから、一切は、最上の状態なので、「これを動かしてはならない!」のだ。
ボースン
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