だけが一人《ひとり》その中で、昨夜はいかにして遊んだかということを、仲間の者に発表する勇気と、発表せざるを得ない衝動とを持っていた。
その話によると、若い船員たちにとっては、その歓《よろこ》びを得たことは、そのために首を切られることがあるにしても、なおかつ非常にいい、得難いことであった。なぜかならば、
三上はこう説明した。「ほんとに、自分の亭主のように親切にした」と。
彼らは、人間の「愛」には、うそにもほんとにも、沙漠《さばく》のように渇《かわ》き飢えていたのだ。沙漠にオアシスの蜃気楼《しんきろう》を旅人が見るように、彼らは「愛」の蜃気楼さえをもさがし求めたので。それは「愛」の形骸《けいがい》であったかもしれない。しかも彼らは、それ以上のものを知らなかったのだ。彼らは、そこへ持って来て、原始的な制度の残っている、いくらか何か真実らしいもののある――それは、彼らの幻影と、極端な想像とから来たものであろう――「愛」の一夜を過ごしたのだ。
彼女らが、彼らに、ほんとに人間として、仲間として接近された時、彼女らも、時としては、その夜、強い反抗と、自暴自棄とから、涙の多いその女性としての一
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