んだぜ! そして、みんな自分の家を持ってるんだぜ、自分の家へ連れていくんだぜ、素人《しろうと》みたいなのや、かと思うと芸妓《げいぎ》も及ばないようなのがいるんだぜ。そして、皆素人素人してるんだぜ。まるで自分の家へ帰ったようなものだぜ。日本一だ! 全くここの女郎買いを知らないやつは船のりたあいえないくらいなんだぜ」それは、恐ろしく皆の者を興奮させた。有夫の女郎、素人の女郎! 人に飢えた船のりはもう有頂天にされてしまったのであった。それはまるで錦絵《にしきえ》の情緒じゃないか。
それは、全くおそろしいほど、彼らの好奇心をそそった。素人の娼婦《しょうふ》! 一軒を持っている娼婦! それは全く独特のものであった。
この興奮剤は、恐ろしい偉力を現わした。伝馬は直ちにおろされた。
彼らは大騒ぎをしておろした。それは難なく、海面へおりた。そして、三上は、実際直江津の漁夫を笑うかのように、楽々とおもてへ漕《こ》ぎ寄せた。ボースン、ナンバン、ナンブトー、大工、という順序にロープを伝って乗り込んだ。
櫓《ろ》が二|挺《ちょう》立てられた。三上と大工とがそれを押した。
波の山、波の谷を、見えつ隠れ
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