い、え、これに判をつけ、さもねえと、正月は横浜じゃできねえぜ』と高飛車《たかびしゃ》に出たら随分痛快だろうね」西沢はいった。
「出帆の時はいいだろう。第一、おれはチエンロッカーにはいらないよ」波田は、自分のあの困難な仕事が、船の出帆に際して、どうしても省略することのできない重大な作業であることを、ハッキリ見ることができた。「おれたちを月給|盗棒《どろぼう》みたいに考えることは、まるで違ってるってことをハッキリ思い知らせた方がいいだろうよ」彼は、何だかほんとうに、人間として、労働者として、貴《たっと》い犠牲的な、偉大な事業に、初めて携わりうるという晴れがましい誇りと、自信とを感じないわけには行かなかった。
「だが、これがよし通ったにしても、これが最後の勝利ではないということを、よく考えて、なるたけ大事をとってくれないと困るよ。たとえば要求は通ったけれど、あとで気をゆるめたために、毎航海毎航海、一人《ひとり》ずつ下船させられたなんてことになると、二、三航海のうちに、また元々どおり、ほかの人間は搾《しぼ》られるし、僕らだってばかを見なけれやならないからね、争議は、その時も大切には相違ない
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