が、跡始末がもっと大切なんだからね」藤原は、彼の苦い経験を思い起こした。「せっかくきれいに掃除《そうじ》しても塵取《ちりと》りですっかり取ってしまわないで、すみっこの方にためときでもすると、埃《ほこり》はすぐに飛び出して、前よりもきたなくなるようなものだからね。ことに、三上のような捨てっぱちなやり方は、残った同志のことを思えばやれないはずだと思うよ」藤原は、一切のプログラムを腹案しつつ言った。「でボースンやカムネ(カーペンター――大工――の訛《なま》り)はどうするんだね」波田はボースンや大工が裏切り者になりはしないかを恐れた。彼らは籠《かご》の中で孵《かえ》った目白のようなものであった。自分の牢獄《ろうごく》を出ることを拒む、その中で生まれた子供のようであった。彼らは船以外に絶対に、パンを得られないほど、船に同化されていた。たとえば彼らは、ちょうど人間ほどの太さのねじ釘《くぎ》にされてしまったのだ。それは船のどこかの部分に忘れられたようにはまり込んでいるのだ。そして、それは大切なねじ釘なんだ。だから錆《さ》びるまでそこへそのまま置かれるのだ。錆《さ》びると新しいのと取り換えられねばなら
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