しということにしてもらおう。これらのことは、ぜひ片をつけるべき性質のものであり、またつけねばならない状態に、われわれは追い迫られている。そこで、これらのことをいつ、交渉を始めるがいいかということの話が、彼らの間に、西沢によって口を切られて問題になった。
 「それは、交渉をチーフメーツに対してやるか、または最初っから船長に対してやるべきものか、それが問題だね」と小倉は言った。
 「もちろんそれは決定権を持っている船長との最初で最後の交渉にならねばならんだろう」藤原が答えた。
 「君の言うように、それが最初で最後であると言うならば、交渉を拒絶された場合には、どうなるんだろう」小倉はその点をおそれていた。もし交渉が不調になったりした場合、同盟下船とでもいうことになれば自分は明らかに乗船停止を食うだろう。そうすると、自分は高等海員の免状をとる資格がなくなってしまうんだ! 彼は苦しい立場にあった。彼はもし、高等海員になってやや多い収入を得ないならば、山陰道《さんいんどう》の山中で、冷酷な自然と、惨忍なる搾取との迫害から、その僻村《へきそん》全体が寒さのために凍死し、飢餓のために餓死しなければなら
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