所兼監督の詰め所の交番ようのものが「置い」てあった。
 彼らは、石炭と海との親不知《おやしらず》、石炭と石炭との山の谿間《たにま》を通って、夕張《ゆうばり》炭山へ続いている鉄道線路を越して、室蘭の市街へ出た。その街《まち》は、昼も夜のように寂しい感じのする街であった。方角を忘れてしまったが、室蘭製鋼所のある反対側、桟橋を上がって右の方へ大通りをさびしく歩いて行くと、道が、上中下三段ぐらいに別れて、山の側面へ各《おのおの》の家の並びを持って並行についている。その中段の通りへ、東洋軒という、この町で見つけた初めビックリしたほど、立派な「文化的」な構えと「文化的」な菓子を売っている店があった。ガラス製の立派な箱が十五、六、その広い鋪《みせ》に並べてあって、その中には、外国人がクリスマスに食べるようなパイや、その他種々な生菓子が並べてあると、一方の棚《たな》の中には、栗饅頭《くりまんじゅう》や、金つばや、鹿《か》の子《こ》などという東京風の蒸し菓子が陳列してあった。その店の間から靴《くつ》を脱いで、階段をのぼると、二階二間がホールになっていた、はいって左側のは、大テーブルが一つと椅子《いす》が
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