利子で月給から天引きされるところの借金――をおさえながら叫んだ。
皆はそろって出かけた。出がけに、波田は、ボーイ長に言った。
「すぐ帰って来るよ。菓子を買って来るぜ、待ってたまえよ。そして、明日《あす》は、午前中に病院へ行くんだ! すぐ帰るからね」彼は三人のあとを追っかけて、桟橋へとタラップを、猿《さる》のように伝って飛んで降りた。
西沢たち三人はタラップを降り切ったところで彼を待っていた。
それは寒い夜であった。水夫たちは不完全な防寒具で、皆震え上がっていた。オーバーを持っていたのは藤原と小倉とだけであった。彼らは、どこかの古着屋で、それを買ったのだ。藤原のは上着の大き過ぎるくらいに小さかったし、小倉のは米一斗袋に三升詰めたくらいにダブダブしていた。
彼らは馬蹄型《ばていがた[#「ばていがた」は底本では「ばていがい」と誤記]》の海岸を一列に並んで、黙々として歩いた。歯が痛かった。風は頬《ほほ》を透《とお》して、歯の神経をひどく刺激するのであった。水夫たちは、彼らが貧乏であるために、必要以上に苦しまねばならないことを思っていた。
「メリヤスの新しいシャツが一枚あれば」波田は
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