った境遇の下にあるんだ。そして、お互いにかみつき合おうとしている。ばかな話だ! 僕らは、生きる道を採るのだ。君の、今の直接の生きる道が医者にかかることにあるように、労働者階級は、階級としての、生命の道へまっしぐらに進むべき時なんだ!」
 それは、ボーイ長へ話してるというよりも、彼がひとり言をいってる、と言った方が正当であったくらいだった。
 波田、西沢、小倉などはまだ上陸をせずに、一緒に、彼の話を聞いていた。
 水夫では、波田、コーターマスターでは小倉が、今夜の当番であった。
 波田、小倉、西沢、藤原と、四人の中で、酒を飲む[#「飲む」は底本では「飯む」と誤記]のは西沢だけであった、あとの三人は酒よりも甘いものであった。特に波田と来ては、前にもいったように、菓子のために「身を持ちくずす」ほどだったのだ。
 「みんなで、東洋軒へ行って、お茶でも飲みながら、話をしようか」と、藤原は、皆が自分を待っててくれたのが、――上陸を十分延ばすことが、どんなにつらいことかは、読者は船長の例で知っているはずだ――気の毒になって、皆を菓子屋へ誘った。
 「よかろう」波田は、懐中の三円――その月末には二割の
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