ってくれたまえね。今度は僕も、そのつもりでいるんだから」と藤原は快く、請け合ってくれた。ボーイ長は非常に喜んだ。
桟橋にも、馬蹄形《ばていがた》の街《まち》にも、その後ろなる山も、高原も、みな、美しく、厚い、雪で念入りにおおわれ、雪面を吹きまくる北海道の風はしびれるように痛かった。
万寿丸は桟橋へついた。桟橋の漏斗《じょうご》はその長いくちばしを、船のハッチの中へ差しのぞけた。それからは白い雪の代わりに黒い石炭が降って来た。
船員たちは、船長から、水火夫に至るまで、自分を、完全に縛りつけている、その動揺する家屋から、解放しようとして、それぞれ準備に忙しかった。
船長は、室蘭から少し内地へはいった登別《のぼりべつ》という温泉地へ、室蘭|碇泊《ていはく》中は必ず泊まり込んでいた。そこには、彼の妻や子供の代わりに、彼の愛妾《あいしょう》がいるのであった。
一般に北海道に美人が多いかどうかは、わからないが、しかし、飛び抜けた美人を時々、われわれは北海道で見る。色が「抜ける」ほど白くて、顔立ちの非常に高雅な美人を、われわれは、雪に埋《うず》もれた山腹の遊郭にさえ見いだすことができた。そ
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