かにそうあるべきだ。なぜかならばそれは「階級」と「身分」とが違うからであった。それはまたなぜかならば「階級」と「身分」とは人間と猿《さる》とをへだてるよりも、もっとひどく人間と人間をへだて、離したからだ。
かくて、ボーイ長の負傷は、水夫らに何とはなしに、陰惨な印象を与え、白内障《そこひ》の目における障害のように、いくらふいてもふいてもとれなかった。そして、それはこのゴロツキどもを、布団《ふとん》に紛れ込んだ針のように、時々チクチクとつっ突いた。かつ針は、いつかはあまりの痛さに「ゴロツキ」どもを飛び上がらせずには置かないのであった。
ボーイ長は、自分にとっては何よりも尊い自分の生命のために、相手は船長であれ何であれ、「今日《きょう》という今日は交渉しよう」と決心した。そしてそれは藤原に相談すべきであると思い決めた。
二八
一方水夫らは、ボイラー揚陸のために、ハッチの蓋《ふた》をとり、ビームをはずした。そして彼らは、マストの内部にとりつけてある足場を伝って、ダンブルの中へと降りて行った。それは厳重に荷造りがしてあった。水夫らは、それが航海中ゴロゴロあばれ出さないように、
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