彼自身でも、疼痛に対しては、非常にハッキリした意識を持っていたが、あまりに、そちらの方へのみあらゆる神経を集めたので、自分のもだえや叫喚には、ボンヤリしているのだった。
 水夫らは帰って来て、この苦悶《くもん》のさまを見ると「あまりあばれると、かえって傷が悪くなるから、じっと我慢しておれ」と、慰めるよりほかに道がなかった。水夫たちはボーイ長の負傷に対して、非常な嫌悪《けんお》の念を一様に感じていた。それは、彼がけがをしたのが、彼の過失だからというのではなかった。また、負傷したのが彼だからというのでもなかった。それは、ボーイ長が自分の負傷について、神経を全く疲労させ、身をのろい世をのろい、ついには絶望的に自分の足までものろうような、それと全く同じ感情が、水夫らにあったからであった。水夫らは、それを意識するとしないとにかかわらず、そこに、泣きわめき、狂い叫び、のた打ち回る自分自身の運命を、朝も夜も、食事にも眠りにも、焼けた鏝《こて》でも当てられるように、ジリジリと感じないではいられなかったからである。それから逃《のが》れる術《すべ》はなかったのである。
 水夫らは、自分の負傷のように、ボー
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