が、まだうめいているのであった。
波田は、ボーイ長に、朝鮮|飴《あめ》を二本買ってやった。ボーイ長は涙を流して喜んだ。
疾病や負傷や死までが、生活に疲れ、苦痛になれた人たちにとっては軽視されるものだ。生活に疲れた人々は、その健全な状態においてさえ、疾病や負傷の時とあまり違わない苦痛にみたされているのだ。人間がそれほどであることは何のためか、だれのためか、なぜそれほどに人間は苦しまねばならないのか、それはここで論ずべきことじゃない。
おもしろいことは、この沖売ろうの娘は、おもてのコックと後になって、――四年もこれの書かれた後――二週間だけ一緒になって世帯を持った。二週間の後彼女はコックのために酌婦に売り飛ばされて、夕張《ゆうばり》炭田に行き、コックは世帯道具を売って、ある寡婦《やもめ》の家へ入り婿となって、彼自身沖売ろうになり、日用品や、菓子などを舟に積んで、本船へ持って来るようになったことだ、が、これはズッと後の事だ。
水夫たちの食事が終わると、ボースンは、チーフメーツのところへ仕事の順序をききに行った。
チーフメーツは、クレインが来るから、それまでのあいだに、ボイラーの方を
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