って行くか、ということをながめ、心で研究していた。
彼らは、何も見えない濃霧の中を、コンパスと海図とだけで、夢中になって飛んで行く船が不思議でたまらなかった。
万寿丸は、その哀れな犬の遠ぼえを、絶えず吹き鳴らしながら、かくして進んで行った。
霧の上に、夜の闇《やみ》が、その墨をまき始めた。一切のものが今にも失明しようとする者の、最後の視力のようにボンヤリしてしまった。
と、突然、ブリッジに立ってる者は船長から、波田に至るまで急に飛び上がった。おそろしい速力を持った巨大な軍艦が、その主砲を打《ぶ》っ放して、その轟音《ごうおん》と共に、この哀れな万寿丸の舳《へさき》を目がけて、突進して来たのであった。それは全くとっさの場合であった。
「ハールポール」と船長は、舵機《だき》をあやつっている小倉の前へ来て、飛び上がりざま叫んだ。その声は絶望的にブリッジに響きわたった。
機関室への信号機は「フルスピードゴースターン」全速後退を命令して、チンチンチンチンとけたたましく鳴りわたった。
船長初め、小倉らブリッジにあるすべては「打《ぶ》っつけた」と覚悟していた。
波田に西沢は、何だかまる
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