たところへ、現金を返すんだが、それが今足りないんだ。船は今ドックにはいってる××丸だから、伝馬を泛《うか》してあるんだ。それで、二日ばかり借りたいというんだがね。利息はいくら高くてもかまわないってんだ。どうだろう。見に行ってもらえんかね。そこにつないであるんだが」三上は、これを昨夜伝馬に乗る前から計画していたのであった。そして彼は、その計画を完全に信頼していたのであった。
「伝馬じゃちょっと困りますね。蔵《くら》にはいりませんからね。それに船の伝馬じゃなおさら、何とも仕方がありませんね。どうぞ、それはまあ、何かまた別な品ででもございましたら」主人は一も二もなく断わってしまった。
三上は、驚いた。彼は驚いたのである。彼は、まだ今度の事ほど綿密に、長い間かかって、企てたことはなかった。それは室蘭《むろらん》に碇泊《ていはく》しているころからの計画であった。その計画は、サンパンを占領するという点までは、彼の計画どおりに進行したのである。であるのに、最後の点に至って、これほど何でもない問題が拒まれるという、その事が彼を驚かした。「だが、この家は伝馬を扱うのになれていないと見える」と、すぐ、
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