人の船員たちが今休んでいるのであった。
 「おばさんのご亭、まだ帰らないかい?」三上はきいた。
 「帰らないよ、まだ。向こうで髪の毛の赤い、青い目の女房でも持ってるだろうよ」
 「そのつもりで浮気をしてると、えらいことになるぜ。ハッハハハハ」
 「相手さえあればね。ホホホホホ」
 「僕は下船したんだから、当分また厄介になるよ。頼むよ、いいかい。チョッと出かけて来るから、おやじが帰ったらそういっといとおくれよ」三上が靴《くつ》をはいてると、
 「そして荷物は? 小屋? おやじさんこのごろ工面がよくないんだから、十でも十五でも入れないと、だめだよ。わかってるね」と、おばさんは、だめを押した。前金を十円か十五円は入れなけりゃ、とても置かないというのであった。
 「大丈夫だよ。そんなこたあ、いうだけ野暮《やぼ》さ。ヘッヘッヘヘヘヘ」三上は表へ出て行った。
 彼は近所の質屋へ行った。それは彼の常取引の質店であった。
 「いらっしゃい、しばらくで、お品物は?」主人はきいた。
 「実はね。品物はここまで持って来られないんだが、二日だけ、伝馬《てんま》で金を借りたいんだがね。ボースンが、融通してもらっ
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