消えてなくなってしまった。そこで、三年ばかり前から、やもめの、ここのおやじのところへ、飯たきに来て、亭主の帰るのを「網を張って」待ってるのであった。
 「まあ、三上さんだったわね。どうしたの、いついらしったの?」
 三上が、のっそりはいったのを見たおばさんは、長火鉢《ながひばち》の前に吸いかけの長煙管《ながぎせる》を置いて、くるりと入り口の方を振りかえって、そういった。
 「おやじはチャンス取りか」三上はブッキラ棒にきいた。
 「ええ、相変わらず、急いでるの? それともゆっくりできて?」とおばさんはきいた。
 「急がねえよ、上がらしてもらおう」といって、彼はもうそこへ上がってるんだったが、長火鉢の前の座ぶとんの上へ「上がらしてもらって」おばさんの長煙管で、スパスパと煙草《たばこ》を吸い始めた。
 「随分ごぶさたね、三上さん。あっちにはこんなにごぶさたしやしないでしょうね。おこられるからね」
 「真金町《まがねちょう》? 毎航海さ、おやじはおそくなるだろうね。今幾人いる」
 「十一人、暮れに迫って、口はないし、はいるところはないし、おやじさん、困っててよ」と指で丸をこしらえて見せた。十一
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