主義者の、資本主義の番頭のおれを、まず血祭りに上げねばならぬ。おれは、おれの村を、ブルジョアの番頭になれば、救えるという謬見《びゅうけん》を捨て去るべきだ。おれの救わなければならないのは、おれの村だけじゃなくて、この地上の一切だ」
 小倉は元気よく、まるで今にも、ブルジョアに出っくわしさえすれば飛びつきそうに、こう考えたが、それは彼には絶対に不可能な事であった。彼は、依然事大主義者だった。一切が腐ってしまっても、円《まる》くさえあればそれで、「安心」なのだった。
 小倉はその性格が煮え切らないところから、この事件の進展に対し、何らの役目を勤めることのできない一の木偶《でく》の坊《ぼう》に過ぎなかった。
 三上が船長に与えた、侮辱は、下級船員全体への復讐《ふくしゅう》の形を船長によって取られた。
 そして、この事が、ここに述べるところの、同盟|罷業《ひぎょう》を惹起《じゃっき》した。ブルジョアの番頭対、プロレタリア! 船では、ブルジョアは決して傭《やと》い主《ぬし》としてのその姿を労働者の前へ現わさなかった。

     二三

 三上は、伝馬を押して、一度|神奈川《かながわ》沖まで出た
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