びかかった。
 小倉は、かいつまんで昨夜の困難な航海から、船長の態度から、三上の行為から、宿屋へ――曖昧屋[#「曖昧屋」は底本では「瞹昧屋」と誤記]《あいまいや》とはいわなかった――泊まって、凍りついた服をかわかして、けさまでかわくのを待っていたこと、三上は、黙って、宿を先へ出て、宿の者へは一足先へ船の伝馬で帰るからといい置いて行ったこと。あわてて飛んで出て、波止場へ来たときには、もう三上は影も見えなかったこと。船長はどんな措置をとるか、打っちゃってはとても置かないだろうということなどを、簡単に、しかし要領を摘まんで話した。
 セーラーたちは黙って聞いていた。そうして、三上が一足先へ出て、まだ帰って来ないということを、小倉ほどに心配しないのみならず、むしろそれをひどく痛快がった。
 「いっそ本船へ乗って逃げたらおもしろかったな」などと茶化しさえした。一向だれもその事に対して「こうしたらいいだろう」という意見を持ち出す者はなかった。だれもが、その単調でない、奇抜な話を聞いて、その話と、事件とに満足してしまった。
 小倉はここでもまた彼が事柄をあまり簡単に見過ごしていたこと、今では彼|一人
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