。
「どうしたんだ。一体、そして三上は?」
「三上が伝馬で、けさ帰って来てるはずなんだよ」小倉は、三上が伝馬を売り飛ばすか質に入れるかするといった、その、とても実現できそうもない、彼の計画だけはいうまいと決心した。
「冗談いっちゃいけない。だれも帰って来やしないぜ」
「それじゃ、おもてでよく、すっかりその事情をくわしく話そう。ちょっと困ったことが起こったんだ。船長と三上とがけんかしたんだ。それを、今おもてで話そう。皆いるかなあ」小倉はこういいながら、もうおもてへのタラップを降りて、駆けて行った。
おもてでは、ボースンから、大工、水夫たち、全部が、いつでも入港のできるように、準備を整えて、船長の帰るのを待っていた。それよりももっと、三上と小倉との消息について待ち切っていた。
「どうも済まなかった。ただいま」と叫びながら小倉はそこへ駆け込んで来た。
「どうしたい三上は」
「さては女郎買いをしやがったな」
「伝馬で帰ったのかい」
「うまくやってやがらあ」
各人が考え、想像していたことの最初の言葉が、彼のまわりに、桟橋から船に落ちる石炭のように轟然《ごうぜん》と、同時に飛
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