い、[#「、」は底本では「。」と誤記]虐げられたる女性、それは、虐げられさいなまれて来た労働階級と、よく似た運命を持っていた。
 彼らは女性を慕った。そして、それが娼婦《しょうふ》と淫売婦《いんばいふ》とに限られてあった。女の中でも最も弱い階級と、男の中で最も虐げられた階級との間には、ブルジョアがそれらに対する時と違って、どこかに共通な打ち解けた点があった。それは共同の敵を持っている味方同志であった。
 表面的の関係は買い、売った、ことになっても、彼らにきわめてわずかに残された人間性が、それを、人間的に引き戻す機会もあり得た。そして彼らはどちらも、プロレタリアであった。
 荒《すさ》みにすさんだ心に、落ちる一滴の涙は、どんなに悲しいものであるか。
 女はやがて牛肉を鉢《はち》に並べて持って来た。そしてそのあとから今一人若い二十二、三の女中がお燗《かん》のついた銚子を持ってはいって来た。
 女がいたり、酒があるということは三上を有頂天にした。彼は一人《ひとり》でしきりに飲んだ。女たちにもしいた。少しは彼女らも飲んだ。
 「どうしてあなたは少しも飲まないの」と、若い方のが、小倉にもたれかか
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