りながらきいた。
「その代わり食ってるだろう」
「だって、私たちもいただいてるんですもの。少しは飲むものよ、男ってものは、ね」
彼女は小倉が生《き》まじめで、肉ばかり食ってるのを見て、少し陽気にしてやろうと考えたらしいのだった。
「ところが、僕は酒が飲めないんだ。船のりらしくもないだろう。でもやっぱり飲めないんだ。虫がきらいというんだろうね」といいながら、小倉は肉や葱《ねぎ》などをつつきながら、頭は纜《もや》いっ放しの伝馬《てんま》のことと、三上対船長との未解決のままの問題との方へばかり向いていた。
で彼は、三上が、しきりに女をからかったり、例の変態的な性格でいやがらせたりしながらも、小倉の方に時々探るような目を注ぐのに気がつかないのだった。
三上は、やはり、船長との一件で小倉の意見が聞きたかったのであったが、それよりも、彼は、その場の喜び、形式だけであるかもしれない、事実それに違いないところのその浅い喜び、ほとんど通常の陸上の人から考えると嘔吐《おうと》を催すかもしれない、その女たちの風体、態度、その他一切の条件にもかかわらず、それを長い間そのために一切を捨てて探《たず》
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