ぬれの靴を脱ぎ、その着物をかわかしうることになった。二十七、八になる女中がすぐに火鉢《ひばち》へ火を入れて持って来た。
「どうしたの、ちょいと、今ごろ、今入港したの! そうじゃない? まあ! 随分ぬれててね。若いからよ、ホホホホ。脱いでかわかしなさいな。ね、私、着物を持って来て上げるわ、泊まってくんでしょう。もちろんだわね。ホホホホホホ」
彼女は全くの親切からのようにそういった。そして、下へ降りて行った。どてらでも持って来るのらしかった。
三上はもちろん喜んだ。そして彼はもちろん泊まる気でいた。小倉も一人《ひとり》で帰るわけには行かなかった。それに彼は三上の今夜の事件を、どういうふうに処置をつけるか、考えねばならなかった。――船長は明朝になったら、三上を懲戒下船命令を発して、一年間あるいは三年間ぐらいは乗船不可能にしてしまうだろう。それだけでなく、それだけで済めばいいが、事によると、恐喝《きょうかつ》取財ぐらいで告訴するだろう。これらについても自分としては何とか考えをまとめて置かなければならない。それにとにかく、こんなにズブぬれのガツガツの飢えではしようがない。そこで、二人は腹を
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