銃は捜査の結果、現場から余り離れていない雑木林の中で発見したという事です。そしてそれは殺された男の所有品である事が判ったのです」
「被害者の拳銃で伯父が相手を射撃するというのは不思議ではありませんか」坂口は元気づいて叫んだ。
「それが却っていけないのです。林さんは旅行に出掛けたと見せて、実はパーク旅館のその男の隣室に宿《とま》っていたのです。それで娘を助ける事が出来、拳銃も持出す事が出来たものと、警察では思っているのです」
「然しその拳銃がどうして殺された男の所有品である事が判明《わか》ったでしょう」
「パーク旅館の滞在人であるという事は、昨夜の中に所持品で知れたのです。それで旅館の部屋を捜査《さが》しているうちに、その男がスマトラにいた頃、官憲の拳銃購入許可書と銃器店の出した受取書を発見したのです。その受取書に拳銃の番号が記してあったという事です」エリスは絶望したように首を左右に振った。
「そうですか、伯父自ら罪を承認したといえば、どうしても致し方ありません」坂口はその儘|俯向《うつむ》いてしまったが霎時すると顔を上げて、
「どうか有の儘にお話して下さい。小母さんはどの位永くあの腰掛
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