見れば宝引はおもに夜の遊びと見えたり。そのほか宝引の句
[#ここから5字下げ]
宝引に蝸牛《かぎゅう》の角をたゝくなり 其角
投げ出すや己《おのれ》引き得し胴ふぐり 太祇《たいぎ》
宝引や和君《わぎみ》裸にして見せん 嘯山《しょうざん》
宝引や今度は阿子に参らせん 之房
宝引の宵は過ぎつゝ逢はぬ恋 几董《きとう》
結神
宝引やどれが結んであらうやら 李流
[#ここで字下げ終わり]
[#地から2字上げ](三月十八日)
病室の三方には襖《ふすま》が十枚あつて茶色の紙で貼つてあるがその茶色も銀の雲形も大方はげてしまふた。左の方の柱には古笠と古蓑《ふるみの》とが掛けてあつて、右の方の暖炉《だんろ》の上には写真板の手紙の額が黒くなつて居る。北側の間半《けんはん》の壁には坊さんの書いた寒山《かんざん》の詩の小幅が掛つて居るが極めて渋い字である。どちらを見ても甚だ陰気で淋《さび》しい感じであつた。その間へ大黒様の状さしを掛けた。病室が俄《にわ》かに笑ひ出した。[#地から2字上げ](三月十九日)
頭の黒い真宗《しんしゅう》坊さんが自分の枕元に来て、君の文
前へ
次へ
全196ページ中77ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
正岡 子規 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング