《ほうびき》のしだれ柳や君が袖 失名
[#ここで字下げ終わり]
とあるは親が縄を持ちながら胴ふぐりを見せじとその手を袖の中に引つこめたる処を形容したるにや。かくて投げ出したる縄を各※[#二の字点、1−2−22]一本づつ引きてそのうち胴ふぐりを引きあてたる者がその場の賭物を取る。その勝ちたる者代りて次の親となる定めにて、胴ふぐり親の手に残りたる時はこれを親返りといふとぞ。
[#ここから5字下げ]
保昌《やすまさ》が力引くなり胴ふぐり 其角《きかく》
宝引や力ぢや取れぬ巴どの 雨青
時宗が腕の強さよ胴ふぐり 沾峩《せんが》
[#ここで字下げ終わり]
などいふ句は争ふて縄を引張る処をいへるなるべく
[#ここから5字下げ]
宝引やさあと伏見の登り船 山隣
[#ここで字下げ終わり]
といふ句は各※[#二の字点、1−2−22]が縄を引く処を伏見の引船の綱を引く様に見立てたるならん。
[#ここから5字下げ]
宝引に夜を寐ぬ顔の朧《おぼろ》かな 李由《りゆう》
宝引の花ならば昼を蕾《つぼみ》かな 遊客
[#ここで字下げ終わり]
などいふ句あるを
前へ
次へ
全196ページ中76ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
正岡 子規 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング