《ほうびき》のしだれ柳や君が袖      失名
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とあるは親が縄を持ちながら胴ふぐりを見せじとその手を袖の中に引つこめたる処を形容したるにや。かくて投げ出したる縄を各※[#二の字点、1−2−22]一本づつ引きてそのうち胴ふぐりを引きあてたる者がその場の賭物を取る。その勝ちたる者代りて次の親となる定めにて、胴ふぐり親の手に残りたる時はこれを親返りといふとぞ。
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保昌《やすまさ》が力引くなり胴ふぐり     其角《きかく》
宝引や力ぢや取れぬ巴どの     雨青
時宗が腕の強さよ胴ふぐり     沾峩《せんが》
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などいふ句は争ふて縄を引張る処をいへるなるべく
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宝引やさあと伏見の登り船     山隣
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といふ句は各※[#二の字点、1−2−22]が縄を引く処を伏見の引船の綱を引く様に見立てたるならん。
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宝引に夜を寐ぬ顔の朧《おぼろ》かな     李由《りゆう》
宝引の花ならば昼を蕾《つぼみ》かな     遊客
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などいふ句あるを
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