章を見ると君は病気のために時々大問題に到著《とうちゃく》して居る事があるといふた。それは意外であつた。
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病牀に日毎餅食ふ彼岸《ひがん》かな
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[#地から2字上げ](三月二十日)

 露伴《ろはん》の『二日物語』といふが出たから久しぶりで読んで見て、露伴がこんなまづい文章(趣向にあらず)を作つたかと驚いた。それを世間では明治の名文だの修辞の妙を極めて居るだのと評して居る。各人批評の標準がそんなに違ふものであらうか。[#地から2字上げ](三月二十一日)

 三日後の天気予報を出してもらひたい。[#地から2字上げ](三月二十二日)

 大阪の雑誌『宝船』第一号に、蘆陰舎百堂《ろいんしゃひゃくどう》なる者が三世|夜半亭《やはんてい》を継ぎたりと説きその証として「平安《へいあん》夜半《やはん》翁三世|浪花《なにわ》蘆陰舎《ろいんしゃ》」と書ける当人の文を挙げたり。されどこはいみじき誤なり。「夜半翁三世」といふは蕪村《ぶそん》より三代に当るといふ事にて「三世夜半亭」といふ事に非ず。もし三世夜半亭の意ならば重ねて蘆陰舎といふ舎号を書くはずもあるまじ。思
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