評を試むるの機を得んかなほ幸《さいわい》なり。[#地から2字上げ](一月二十五日)
俳句界は一般に一昨年の暮より昨年の前半に及びて勢を逞《たくまし》うし後半はいたく衰へたり。我《わが》短歌会は昨年の夏より秋にかけていちじるく進みたるが冬以後一|頓挫《とんざ》したるが如し。こは固《もと》より伎倆《ぎりょう》の退《しりぞ》きたるにあらず、されど進まざるなり。吾《わが》見る所にては短歌会諸子は今に至りて一の工夫もなく変化もなくただ半年前に作りたる歌の言葉をあそこここ取り集めて僅《わず》かに新作と為《な》しつつあるには非《あらざ》るか。かくいふわれもその中の一人なり。さはれ我は諸子に向つて強ひて反省せよとはいはず。反省する者は反省せよ。立つ者は立て。行く者は行け。もし心|労《つか》れ眼《まなこ》眠たき者は永《なが》き夜の眠《ねむり》を貪《むさぼ》るに如《し》かず。眠さめたる時|浦島《うらしま》の玉くしげくやしくも世は既に次の世と代りあるべきか如何《いかん》。[#地から2字上げ](一月二十七日)
人に物を贈るとて実用的の物を贈るは賄賂《わいろ》に似て心よからぬ事あり。実用以外の物を贈りた
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